4. 分布
アカリンダニが最初に見つかったのは、二十世紀初め、イギリスで起こったミツバチの大量死がきっかけでした。
その後ヨーロッパ各地に広がったアカリンダニは、アフリカ、インド、ロシアなどにも広がります。
1950年に南米大陸に侵入し、北上を続け、1985年にはカナダまで分布を広げました。
日本においては、2010年に長野県で初めてアカリンダニ寄生が確認されました。
それ以前にも、1963年にDelfinadoが日本でのアカリンダニ記録ありとしていますが、これは日本から輸出されたミツバチからアカリンダニが発見されたというもので(Ehara, 1968)、中村(1988)はDelfinadoの文献が信頼性に欠けるとしています。
2010年以降の急激なアカリンダニの分布の拡大から考えても、1988年時点でアカリンダニがすでに日本に存在していたとは考えにくいです。
世界的分布
日本での分布(ニホンミツバチ)
2010年に長野で発見されたアカリンダニは、その後2012年に滋賀、2013年には中部、関東、東北の各地で確認されました。
2014年には北陸、中国地方では発見され、2015年についに九州、四国でも分布が広がっているのが明らかになりました。
図は、2015年12月末時点でのアカリンダニ分布マップです。
これまでアカリンダニが確認された都府県を赤、未確認の県を青、未調査を白で表してあります。
これらはすべてニホンミツバチの調査結果です。
Kojimaら(2011)はニホンミツバチとセイヨウミツバチのDNA解析を行い、セイヨウミツバチのサンプルからアカリンダニのDNA断片を検出し、 解剖学的にも確認したことを報告しています。
また、農研機構の報告書でも1検体からアカリンダニが確認されています。
しかし、その後の我々の調査では140群3,200個体を超えるセイヨウミツバチの解剖検査を行ってきましたが、アカリンダニは発見されていません。
世界的にはセイヨウミツバチで被害をもたらしてきたアカリンダニが、なぜ日本ではセイヨウミツバチで寄生率が非常に低いのか?この大きな謎を解き明かすべく、現在調査研究を行っています。
*2015年に石川県でセイヨウミツバチからDNA検査でアカリンダニのDNAが検出されましたが、ダニそのものは見つかりませんでした(家畜保健衛生所情報)。
*2016年1月、東京でセイヨウミツバチからアカリンダニが見つかったそうです(玉川大中村先生情報)。
日本での分布(セイヨウミツバチ)
アカリンダニはどこから来たか
日本で見つかったアカリンダニのDNA配列(約670bp)がヨーロッパや北米のアカリンダニのDNA配列と一致することから(Kojimaら, 2011)、海外から侵入したアカリンダニが日本全国で広がっていると考えられます。
さらに長い(約1,090bp)が解析されましたが、同様の結果でした。